大阪地方裁判所 昭和57年(わ)679号 判決 1982年5月11日
本籍
大阪市東区徳井町二丁目四〇番地の二
住居
同町一丁目七番地
医薬品卸売業
中江強
昭和一一年二月二〇日生
右の者に対する所得税法違反被告事件につき当裁判所は検察官藤村輝子出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
一 被告人を懲役一年二月及び罰金二、〇〇〇万円に処する。
一 右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。
一 この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、大阪市東区道修町一丁目一九番地において、本町薬品商会の名称で医薬品卸売業を営むものであるが、自己の所得税を免れようと企て、売上げの一部を除外し、仮名預金を設定するなどの方法により所得を秘匿したうえ、
第一 昭和五三年分の実際総所得金額が四、九四五万五五四円(別紙(一)修正貸借対照表、修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五四年三月六日、同市東区大手前之町一番地所在の所轄東税務署において、同税務署長に対し、同五三年分の総所得金額が一〇九二万円でこれに対する所得税額が二四三万一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額二四〇一万四六〇〇円と右申告税額との差額二一五八万四五〇〇円を免れ、
第二 昭和五四年分の実際総所得金額が四、九一七万六、七五二円(別紙(二)修正貸借対照表、修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五五年三月一五日、前記税務署において、同税務署長に対し、同五四年分の総所得金額が一、〇〇〇万円で、これに対する所得税額が二〇六万六、九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額二、三八三万六、五〇〇円と右申告税額との差額二、一七六万九、六〇〇円を免れ、
第三 昭和五五年分の実際総所得金額が四、九五三万二、九四二円(別紙(三)修正貸借対照表、修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五六年三月一六日、前記税務署において、同税務署長に対し、同五五年分の総所得金額が一、〇七二万六一〇円で、これに対する所得税額が二〇六万六、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額二、三三九万九、〇〇〇円と右申告税額との差額二、一三三万二、五〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部につき、被告人の当公判廷における供述のほか、記録中の証拠等関係カード(検察官請求分)記載の次の番号の各証拠
判示事実全部につき
7ないし20、23ないし40、43ないし63
判示第一の事実につき
1、4
判示第二、第三の各事実につき
41、42
判示第二の事実につき
2、5、21
判示第三の事実につき
3、6、22
(法令の適用)
被告人の判示各所為は、いずれも行為時においては、昭和五六年法律第五四号脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律による改正前の所得税法二三八条一項に、裁判時においては右改正後の所得税法二三八条一項に、各該当するが、右は犯罪後の法令により刑の変更があったときにあたるから刑法六条、一〇条によりいずれについても軽い行為時法の刑によることとし、いずれも所定の懲役と罰金を併科し、かつ各罪につき情状により所得税法二三八条二項を適用し、以上は、刑法四五条前段の併合罪であるから懲役刑については、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし罰金刑については、同法四八条二項により罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年二月及び罰金二、〇〇〇万円に処し、同法一八条により右罰金を完納することができないときは金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用し、この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 金山薫)
別紙(一)
修正貸借対照表
事業所得
昭和53年12月31日現在
<省略>
修正損益計算書
雑所得
自 昭和53年1月1日
至 昭和53年12月31日
<省略>
別紙(二)
修正貸借対照表
事業所得
昭和54年12月31日現在
<省略>
修正損益計算書
譲渡所得
自 昭和54年1月1日
至 昭和54年12月31日
<省略>
修正損益計算書
雑所得
自 昭和54年1月1日
至 昭和54年12月31日
<省略>
別紙(三)
修正貸借対照表
事業所得
昭和55年12月31日現在
<省略>
修正損益計算書
自 昭和55年1月1日
至 昭和55年12月31日
<省略>